海堂尊「ナイチンゲールの沈黙」

第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、映画化・ドラマ化がされた『チーム・バチスタの栄光』に続く、田口・白鳥シリーズ2作品目。父親は発売当時から持っていたのになかなか貸してもらえなくて、文庫本でも話題になり始めた最近になってやっと読めた。
外科医を経た現役の病理専門医だけあって病院内の描写はリアルな雰囲気、作家と医師の両立がどうやってできるかはわからないけれど、今までの経験や現場の中から医療の現実や問題を垣間見させてくれてるんじゃないかな。文章の特徴としては場面ごとのタイトルに日時と場所が併記されていること、病院の見取り図まではないけれど、それでも臨場感や登場人物の導線がわかって面白い。


キーワードになっているナイチンゲールの件は前作のバチスタ手術と比べて、医療分野だからリアリズムを重視するってわけじゃないけれど、抽象的とか非現実的な話もあって作品の評価が分かれそうな気がする。「ドア・トゥ・ヘブン」のようなVIP病室や網膜芽種(レティノ・ブラストーマ)は読んでいて新鮮だった。
障害者福祉専攻で高次脳機能障害をやっているから特に思うけど、一般にあまり知られていない病気や障害を知る機会になるから医療ものって面白いのかも。もちろん学校や現場で学ぶこととはまた違う話なのだけど、知るきっかけがあることはありがたいよね。