DOOR TO DOOR 〜僕は脳性まひのトップセールスマン〜

TBS「DOOR TO DOOR 〜僕は脳性まひのトップセールスマン〜」


ノンフィクションを原作にした『少しは、恩返しができたかな』『マラソン』に続く、二宮和也主演の単発ドラマ第3弾。原作の『きっと「イエス」と言ってもらえる -脳性まひのビル・ポーターはトップセールスマン-』も今までのシリーズも観たことなかったけど、興味深いテーマだから録画してみた。
早くに父親を亡くした脳性麻痺の倉沢英雄(二宮和也)と母親の美津江(樋口可南子)、浄水器の訪問販売会社のきらきら商事に何とか採用してもらうも門前払いが続く。偶然出会った墨田(浅野和之)には詐欺まがいのやり方で商品を売られてしまい、周囲に認められたこととは裏腹に人を騙して初めてお金を稼いだ後ろめたさに苛まれる、これも人によっては間違った色に染まっちゃったかもしれないと思うと怖いな。
あるとき同僚の野崎さおり(加藤ローサ)に面接してもらうために母親が繰り返し頼み込んでいたことを知ってショックを受ける英雄、母親が悪いなんて思わないけどやっぱり自分ひとりじゃ何もできないんじゃないかって考えたら傷つくとは思う。よかれと思っても本人にとってマイナスになることは少なからずあるし、そこは信頼関係とか本人が受容できるバランスみたいなものを考えるしかないのだけど。


脳梗塞で母親が倒れたときにはマンション管理人の松宮(金田明夫)や一人住まいの田村(野村昭子)のように、英雄を気にしてくれる人が地域に現れたのは幸運だった。リハビリをしていた母親は自分のために時間を割かずに、英雄にできることをやりなさいと突き放す、自作チラシとかの効果もあって田村が近隣に口コミで広げてもくれた。
あるとき松宮がマンションの理事会へ紹介してくれたことをきっかけにマンションで大規模な説明会を開くことになってここでも英雄は成功する、ってこの時点でも十分なサクセスストーリーなのにセールストップで表彰された直後にきらきら商事が倒産、こればっかりは運が悪かった。


就活中にさおりに呼び出されて向かった通信販売会社、実は元社長の名和(渡辺いっけい)が昔の部下だった部長の川嶋(堀部圭亮)に頼み込んだってつながりが。障害者雇用の制度の影響もあって採用してもらえることに。
あるとき母親のお見舞い中に最初に騙してしまったお客の伊藤(中島ひろ子)を見つけ、再び訪問して嘘を告白して謝罪と返金をする、首に大きなあざがある息子のためにメディカルメイクをって話が英雄の転機になる。ここから教室に通ってさおりに興味を持たせ、最後にはドア・トゥ・ドアの訪問販売は費用対効果が悪すぎると語る川嶋を説得して道を切り開いた。


相手に言葉に耳を傾けて心の扉を開いてもらおうって気持ちと、ちょっとしたニーズをビジネスにつなげた発想力が英雄の成功した理由かもしれない。原作のビル・ポーターさんがどんな人だったかはわからないけれど、本人の自覚以上に忍耐や努力できる人なんだとは思う、多くのの障害者は長い時間をかけて少しずつステップアップしていくわけだから。
同僚のさおりや田村のような地域の住人が彼を支えてくれたこともあるけど、この話の最大の功労者は母親じゃないかな。お節介すぎるくらいに世話を焼いていた気もするけど、弱音も吐かずに「お父さんの言葉」で英雄を励まして、ずっと信じ続けてきたことは本当に立派な母親だと思う。


やりたいこととできることは必ずしも別じゃない。遠い昔に成功した偉人にも初陣があったように、上手くいかなくても続けていればいつか変われるかもしれない。機会があったら『原作』も読んでみよう。